その光を、追いかけて。









パンッと頬を叩いて、気合注入。

ひりひりと痛む頬に意識がシャキッとする。



「よし」



いつもの時間に起きて。

いつものジャージに着替えて。

いつもの靴を履く。



違うのは、ただひとつ。

学校に行くための荷物がないこと。



「ちょっと、あんた今停学中でしょ。
自宅謹慎だってことわかってる?」

「わかってる。だから走って来るだけ」



まだなにかを言い募ろうとする母さんを振り切るように、行ってきますと口にする。

家を飛び出した。



母さんには少し悪いことをしたなと思ってはいるんだ。

怪我をしてるのに走りに行くなんて言い出す息子、心配になるよな。



怪我に響くかもと、俺だって気にしてる。

でも、仕方がないだろ。

母さんの話に付き合ってたら、……柚季を待たせることになる。






いつも通りの道。

引きつるような違和感に、傷が少し痛む。



だけど、俺は走ることしかできないから。