先生から少しふたりの怪我の具合も聞いた。
幸い、大事には至らなかったらしい。
陽介さんは俺と同じように血が頭から出ていたから量が多かった。
だから、顔が血に濡れて、ひどい怪我に見えたんだと。
あとは陸上の命……陽介さんの足は軽くくじいていたけど、大丈夫だと言われた。
問題は────柚季だ。
泣いていたのに、俺たちが殴り合いを始めてしまったせい。
慌てて止めに入ろうとして、弾き飛ばされた彼女は肩を机にぶつけた。
「青ずんで、動かすと痛いみたい」と言われたんだ。
顔の怪我じゃなかったことを喜ぶべきだというフォローを入れられた。
だけど、そんなことを言われても、気がまぎれることなんてないに決まっていて。
その話のあと、家に戻った俺は母さんに殴った理由を1度だけ問われた。
答えることは、できなかった。