「陽介さん、それは才能じゃないです!
絶対に、違う……っ」
「そうかもしれないけど、少なくともおれはそう思うんだよ」
違う。
違う、……違う!
「そんなのは、甘えです!」
「……どうしても努力できない。
弱い、そういう人がいることをお前は否定するんだな」
苦しそうに目を閉じた陽介さん。
今まで黙っていた柚季が彼に声をかける。
「そんな悲しいこと、言わないで下さい」
振り返れば、ぽろり。
柚季が静かに涙を流している。
「ユズがそんなだから、おれ、は……。
自分が嫌で仕方がなくて、ふたりを汚したくなるんだ」
柚季は力が抜けたのか、その場に座りこむ。
自分の掌に力がこもっていくのを感じた。