自分に掛けられた言葉ではない。

 いつもなら全く気にせずスルーしているところだ。

 それでも思わず見てしまったのは、相手が昨日春花を呼び出した張本人・里桜だったからだ。


(……いつもと変わりない?)

 教室に姿を現した彼は昨日の怖い雰囲気はなく、いつもと変わりないように見えた。


 里桜はそのままいつも通り友人たちと話し始める。

(あれ? 何もしてこないの……?)

 朝から何かをされるのではないかと身構えていたのに、拍子抜けだった。

(いやいや、今は周りの目があるからってだけかもしれないし……)

 そう思い警戒は弱めないでおこうと心に決めると、由美が声量を押さえて話しかけて来る。


「え? ……何? まさか昨日の相手って相良なの?」
「何ていうか……ちょっと意外……」

 ずっと里桜のことを見ていたせいで言わなくてもバレてしまったようだ。

 まあ、バレてしまったのなら仕方ない。
 元々誰だったのかは隠すつもりはなかったのだし、と春花は二人に頷いた。