「二人とも何やってたの? ちょっと目立ってたよ」

 いつも可愛いヘアピンを耳の上辺りで留めている彼女は中学で同じ部活だった篠田 恵美《しのだ えみ》だ。
 ちなみに今日は苺のピンだった。


「別に何も……」
「不審者状態の春花に声かけたら驚かれただけ」

 誤魔化そうとしたのに由美が簡潔に説明した。

「不審者って、由美さっきから酷いよ」
「事実じゃない。それとも自覚なかった?」

 頬を膨らませた春花に、由美はそう言って面白そうに頬を突いて来る。

「むー」

 不満を込めて唇を尖らせると、恵美が今一番触れてほしくないことを聞いて来た。


「それよりさ、昨日の放課後。……誰だったの?」

 最後の方は周囲に聞かれないよう小声で。


「そうそう、あたしもそれ聞きたかったんだ」

 恵美より少し大きい声だったが、由美もヒソヒソ声で乗って来た。


「……」

 いつもは可愛くてなでなでしている恵美の頭を、今日ほど小突いてやりたいと思ったことはない。


 だがこの二人は知っている。春花に呼び出しの手紙が来たことを。
 なぜならその手紙を見つけた時に一緒にいたのだから。

(答えない……わけにはいかないよね……)

 それでもどこまで話すべきか……と少し考えていたとき――。



「おはよー」

 その声に思わずドアの方を振り向いた。