お弁当のご飯をパクリと食べて咀嚼(そしゃく)する。

 何だか味気ないそれを飲み込むと、春花は無意識にため息を吐いた。


「……春花」

「ん? なに?」

 由美に呼ばれて返事をすると、ジト目が返ってくる。


「いや、ほんと何?」

 もう一度聞くと、答えてくれたのは由美ではなく恵美だった。

「春花気付いてる? またため息ついてたんだよ?」

「え? してた?」

 そんな春花の反応に、由美の方が大きなため息をつく。


「いい加減何があったか白状したら? 一人で悩んでたって変わらないんでしょ?」

「そうだよ。相良とあの日何があったの? あの日以降一緒にお昼食べなくなったし……」

「それは……」

 心配してくれる二人に何と説明すればいいのかと迷う。


 里桜が実は地味男ではなかったり、俺様な性格だったりということは一つも話していない。

 話すとすればそこから話さなくてはならないのだが……。


(まず第一にそれを信じてくれるかな?)

 地味男ではないのはともかく、俺様タイプだというのは無理があるとか言われそうだ。


 そうして迷っていると、由美がまたため息を吐いた。

「話せない、か……」