教室に戻った里桜は、自分のお弁当を持ってすぐにまた教室を出た。

 中庭には戻らない。

 どこか一人になれる場所をと探して、校舎裏の非常階段にたどり着く。

 時間もあまりないので、すぐに座ってお弁当を食べ始めた。


(春花はちゃんと食ってるかな……)

 ついさっき泣かせてしまった女を思う。

 だが、すぐに頭の中から振り払った。


 もう関係のない相手のことだ。

 気にしない方が良い。


 そうは思っても、流石に自分が悪かったことくらいは自覚しているので全く気にしないというのは無理な話だった。


 日直で仕事を押し付けられていたのは分かっていた。

 だが、少し遅い気がして教室を出てみると、少し先の方が騒がしいことにすぐ気付く。


 近付くと騒ぎの中心人物が春花と知らない男子生徒だとも分かる。

 その話の内容と、春花の腕を掴んでいる男に腹の底から燃えるような感情があふれ出た。


 何とかそこから連れ出して、中庭に来るまではその感情を抑えることも出来たというのに……。

 春花にあの男のことを問い詰めているうちに我慢も限界が来た。


(……あの男のこと、名前で呼んでたから)

 自分はいまだに『相良くん』なのに、あの男のことは名前で呼んでいた。