「金澤さん、来てくれてありがとう」

 花吹雪の中で相対すると、里桜は(わず)かに微笑みながら礼を言った。


「あ、うん。……それで、話って何かな?」

 二人で会っている所を見られて、クラスメートや友達にからかわれるのも嫌なので早々に本題に入る。


「うん、その……こんなにベタなことしてるんだからもう分かってると思うけど……。俺、金澤さんのことが好きなんだ。付き合ってくれないかな?」

 めい一杯どもりながら言われると思っていた春花は、意外にもすんなりとされた告白に軽く目を丸めた。

(……なんかイメージ的に、赤くなりながら言葉を詰まらせて言うタイプだと思ってた)


 思いの外スムーズに紡がれた言葉に、春花は里桜を少し見直す。

 地味ではあるが、中身までダメ男という訳では無いようだ。


 だが、見直したからといって好感度が大幅にアップしたわけではない。
 友達なら兎も角、恋人になるなんてありえなかった。


「ありがとう、相良くん。でもごめんなさい……」

 そこまで言うと、心にズシリと重い物がのしかかってきた様に感じた。


 春花にとって里桜は友達ですらなく、ただのクラスメートだ。
 “大切な人”の中には入らない。

 その程度の相手でも、好意を受け取れないという事が罪悪感に似た感情を生み出した。