『お前はみたことないだろうが、あの二人は異常だ』


『異常?』


『ああ…さすがにあれは俺も驚いたよ…。
互いが互いに依存しているんだ』


事態がいよいよ深刻化してきたので、ルイは携帯を握りしめた。


『…姫様は確か、物に執着しないことで有名ではなかったか?
失礼だが、すべての人や物を愛してはいるが、逆に言えば愛していないというようなお人ではないか』



“天使の炎”


国やその界隈では、そのように称されるリル・ドリュール。


その美貌だけでなく、それを鼻にかけないどのような下々の者にも変わらない優しさを持ち、王女らしい気品豊かな態度。

そして燃えるような紅い瞳を持つことからつけられたあだ名だ。


確かに彼女は皆に優しい。

そのため第三王位継承者という立ち位置でありながら、国民からの人気は不動の一位である。

彼女を女王に、の声も多い。


しかし、彼女の優しさには必ず裏があるようにルイは思うのだ。


優しすぎて自分の身を滅ぼすようなヘマをしない、適度な優しさ。

初めて会った時から計算高いと睨んでいた。



『そう…だからなのかもしれないなぁ。
ある意味で姫様の安息の場所なんだ、ティンの隣は』