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ルイはイラつきながら、黒塗りの車を屋敷の前の玄関で出迎える。


いつも会社に行くのに乗っている、野崎が同行している車だ。


今回はある人を迎えに行くのに使用した。


野崎は脇に控え、焦点の合わない目で呆然としている。


「…野崎」

「だだだだいじょうぶです。冷静です。きちんとカサンデュールの言語の復習もしましたし」

いつものスーツ姿で、すっかり冷静さを失っている。

そう、仕事がらみの人物なのだ。


「カサンデュールで信仰されているタラック教の復習もしてきましたっ…」


「ご苦労さま…だけど相手は日本語使えるから、カサンデュール語の復習はいらないかな」


「えぇっ…!に、日本語を話されるんですか?さすがです…聡明であらされる…」

「いや、日本に昔すんでたみたいだから」

「えぇえっ…!日本に昔住まれてた!?なんと…まあ…」


大袈裟に仰け反る野崎に、ため息をつく。


…正直、嫌な客である。


カサンデュールを国ごとひっくり返しかねない大人物が来るなんて。

頼みの野崎もこのさまだし、なにしろ相手の性格が大変なのだ。


飄々として、マイペースで、それでいて恐ろしい。



「…ああ…車がとまってしまった…」

「どうしよっ…!きゃあっ」


急いで佇まいを整えた野崎が、シャキッと背に棒を入れたように正した。