「…メイ」


「あれぇ?なんでメイ、ベッドに……あ、ご主人様スーツ皺になってますよ?」


ちょいちょいとルイの皺になってたスーツをつまむ。

能天気な彼女が戻ってきたことに、ルイは大きく安堵した。


「この能天気野郎……!」


「いはい(いたい)、いはいれふ!おふひんはまあっ(ご主人様あ)」


愛らしさとムカつきに、柔らかな頬をひっぱる。

「にゅーっ」とはしゃぐメイに目を細めた。





彼女は孤児である。





『蒲公英園』という孤児院で育ったらしいのだが、そこでルイの父親が拾ってきたのだ。


『蒲公英園』では虐待が、日常だった。

殴る蹴るだけにとどまらず、幼児に性的虐待まで施す酷さ。


それは、メイに深い傷を残した。


彼女の支えは、“お兄ちゃん”含める家族のみ。

メイが“お兄ちゃん”に依存するのも、それしかなかったからである。