あっという間にお昼休みは終わった。


名残惜しいが、職場に戻らねばならない。

いつも玄関まで見送りに来てくれるメイだが、明らかに元気がない。

寂しいのだ、と思うと旨が締め付けられた。

「メイ、行ってくる」

「いってらっしゃいです、ご主人さま……」

「メイさん、あと三時間したらまた来ますから」

「はい、待ってます」


家の中にひとり残るメイは、どこか切ない。
明るくならない顔をなんとか元気にしたくて、こういった。


「そうだ、メイ。三時間後にお菓子を買ってきてこようか」

予想通り、パッと顔を明るくさせた。

そして予想以上に可愛らしかったので、
ドキドキと心臓が早くなった。

「本当ですか!?」

「何がいい?野崎、なにか近くに…」

「最近シュークリームが話題のケーキ屋さんが近所にあります」

「……ありがとう」

早かった。用意していたようだ。

「わあっ!シュークリームですか!?食べたいです!」

「そうか、なら買ってこよう」


目を輝かせて飛び回るメイに、イライラも吹き飛んだ。

よし、シュークリームを買ってこよう。

それもメイがすきなものをぜんぶ。


「じゃああとで。行ってくるよ、メイ」


「はいっ!いってらっしゃいです!」

次は笑顔で送り出してくれた。

幸福感でいっぱいのまま、野崎とルイは扉を閉める。



これが、この部屋でメイとルイの交わした最後の言葉となった。