「おはよう、佳那」

「おはよう、お母さん。今日は早いね」


グレーの通勤スーツを着た、すでに出勤準備完了状態のお母さんと朝のご挨拶。


「今日は早朝会議よ。お父さんはもう出たから」

「そっか」


お母さんはパタパタと忙しそうに、あたしの朝食の準備を始める。


あたしは笑って言った。


「いいよ。自分でやるから」

「あら、でも・・・・・・」

「いいってば。あたしもう高2だよ?」

「そう? じゃ、お言葉に甘えるわ」


バッグを片手に鏡を見ながら、外出前の身だしなみチェック。


そしてお母さんはあたしに笑顔を見せた。


「佳那、玄関のカギお願いね。いってきます」

「いってらっしゃい」


あたしも手を振りながら笑顔を返す。


そして玄関の扉が閉まる音を聞きながら、クロワッサンの袋に手を伸ばした。