「あんまり話したりしてなくても、好きになる事もあるって事じゃねーの」

そんな事もあるのかと思いながら、ふぅんとだけ返事をした私に由宇が顔をしかめる。
軽く流した私の態度が納得いってないみたいだった。

「それだけか? もっと喜んだり自慢したりするかと思ってたのに。
告白されたの初めてだろ?」
「え、ああ……そういえばそうだ。由宇と違って私モテないから」
「わざわざ俺を引け合いに出すな。まぁ、間違ってはないけど」

そう自慢するように笑った後、由宇が話題を戻す。

「モテない梓織が初めて告白されたっていうのになんでそんなテンションなんだよ」

そんなの簡単だ。
名取くんが、由宇の事を異常だとか言ったから。
嫌な風に言ったから、そんな人に好かれても好かれなくてもどうでもいいと思った。

だけどそれをそのまま言うのは絶対に嫌だったから、「言わない」とそっぽを向く。

「……おまえ、本気で俺に隠し事ができると思ってんのか?」
「だって由宇だって色々隠してるじゃない。さっきだって言わなかったし、あと、融資管理課の人に私たちの関係をどう話したのかも未だに教えてくれないし。
だからこれであおいこでしょ」

っていうか、数でいえば由宇の隠し事の方が多いって事になるしいいじゃない。
そう主張したけれど、由宇は納得いかない顔つきで私を威圧してくるから、なるべく目を合わせないように早歩きで警察に向かった。


私と由宇は対等な立場のハズなのに。
むしろ由宇は自ら私の犬だとか言ってくるくせに、由宇の方がいつも優位に立つから。

それが悔しい。