「なんで! 言いかけたんだからちゃんと答えてよ。要は由宇がなんなの?」
「うるせーな。とにかく警察行くんだろ。速く歩けよ」
「誤魔化さないでよ、由……」
「ああ、そうだ。名取、吉岡支店だって言ってたから、吉岡支店からおまえへの内線かかってきても取るなよ」
「え、無理だよ……。仕事なのに。
それに、名取くん、私に電話なんてかけてこないんじゃない?」

別に用もないだろうしと言うと、由宇はおおげさにため息をつく。

「本当に鈍感だよな。さっき口説かれたって教えてやったのに。
まぁ、名取がどんなヤツだか俺もよく分かんねーからなんとも言えないけど。
ただ、さっきの感じだと諦めてないだろ、多分」
「諦めるって……私を? え、名取くん私が好きなの?」

驚いて聞いた私を、由宇が呆れた顔で見た。
本当に心底呆れてるのが感じ取れて、本当に自分のそれ系のアンテナは欠陥品なんじゃないかと思えて情けなくなるほどだった。

「好きじゃないヤツなんか口説かねーだろ。
おまえには言ってなかったけど、あいつ、高校ん時からおまえに気があったし」
「……でもそれは由宇が勝手に思ってるだけでしょ」
「俺のアンテナはおまえのより数倍優れてるから間違いねーし、かけてもいいレベル」
「でも……私、名取くんと話した覚えとかあまりないのに」

かけてもいいって言うくらいなんだから、きっと由宇の言う通りなんだと私も納得したけれど……それにしたって名取くんとは本当に接点も何もなかっただけに信じ切れない。