少し強い口調で遮られて驚いて黙ると、眉間にシワを寄せた名取くんが、真剣な目でじっと私を見てから俯く。
名取くんは両手をそれぞれきつく握りしめていて、どうしたんだろうと思いながら言葉を待った。
夜の少し冷たく感じる風が髪をすくうようにして空気を動かしていく。
「もっと……色んな男を知った方がいいと思う。
星崎みたいに姫川の世界を広がらないように押さえ込むようなヤツじゃなくて……もっと姫川を自由にしてくれるような、例えば――」
「――例えば、名取みたいなって言いたいのか?」
私の真上から聞こえてきた声に、俯いていた名取くんが驚いて顔を上げる。
そして、私のすぐ後ろにいる由宇を見て、慌てたような顔を浮かべた。
「星崎……っ、いつから聞いてた……?」
「多分、名取が梓織を口説き始めたあたりから」
「え、私口説かれてたの?」
驚いて由宇に聞くと、由宇は視線を名取くんに向けたから、私もそれを追うようにして見る。
名取くんは困惑した様子で「気付かなかった……?」と苦笑いを浮かべた。
「うん……ごめん」
「こいつ、恋愛関係鈍いからあんな言い方じゃまったく伝んねーよ」
そう言いながら私の頭をポンと軽く叩いた由宇が、思い出したように言う。
「ああ、あと、高校ん時おまえが梓織に送ったアドレス、悪いけど俺が消したから」
「……は?!」



