恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―



「じゃあ姫川は? 星崎さんが好きなんじゃないの?」
「好きですよ」
「好きなのにやきもち焼かないっておかしくない? あ、もしかして本当に仕事だからって割り切れてるって事?」
「いえ……やきもち自体今までやいた事ないんです」

そう答えると、広兼さんはまた一時停止してしまって。
さっきと同じように水を一口飲んでから「どういう意味?」と聞き直してくる。

「え、だから、由宇が誰かと仲良くしててもやきもちって焼かないです」
「え、なんで?」
「なんでって言われても……今までそういう気持ちになった事がなくて」

え、変ですか?と聞くと、広兼さんはうーんと唸って悩みながらも最終的に頷いた。

「分からないけど……もしかするとそういう人もいるのかもしれないけど、普通は少しくらい妬いたりするんじゃない?
星崎さんなんて特にモテるし、やきもち焼くタイミングなんて他の人より多いと思うけど。
学生の頃からモテてたんでしょ?」
「あ、それはもう。よく言い寄られてたし、バレンタインも周り囲まれてたし」
「そういうの見て何とも思わないの?」
「口悪いのにモテるんだなって思うくらいで……あの、やっぱり変なんですか?」

広兼さんが深刻な顔して見てくるから、やっぱり私どこかおかしいのかもしれないと思えてきて、不安になって聞く。