恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―



「え……付き合ってるの?」
「いえ。私からも由宇からもそういう言葉を使った事はないです」
「でも、する事してるんでしょ? っていうか、姫川にとっては星崎さんが最初の相手なんでしょ?」
「最初っていうか、由宇としかした事ないです」
「どういう流れでする事になったの? 好きだからでしょ、普通」
「由宇が、18歳までに初めてを済ませないと歳を重ねるごとにどんどん痛みが増すって言うから……怖くなってそれで」

普通に答えたのに、広兼さんはポカンと口を開けたまま一時停止してしまう。
そして、水を一口飲んで頭を片手で押さえてから「じゃあ、キスは?」と聞いた。

「高校に入る前くらいに、由宇がそれくらい済ませておかないといつまでも子供っぽいままだからって」
「あんたそれ騙されてるんじゃ……」
「でも、由宇は口は悪いけど、騙したりする人じゃないですから」
「まぁ……でもそっか。
星崎さんはわざわざ姫川騙してやらなくても、したければその辺に立ってれば女が寄ってきそうだもんね。
って事は、本気で姫川が欲しかったって事か」

コップの中の水を見つめながらぶつぶつと独り言のように言っていた広兼さんが、視線を上げて私を見る。