「帰り、勝手に帰んなよ。もしおまえが先に終わっても会社の前で待ってろ」
「……なんの事?」
「は? おまえがメールよこしたんだろ。別々に帰ろうって」
「ひ、人違いじゃ……」
「とぼけてんじゃねぇ。
とにかく、勝手に帰んなよ。昨日近所で変質者が出たとかで回覧板が回ってきてたし、おまえひとりじゃ危ねーから」

いいな、と念を押すように言った後、由宇は段ボール箱を抱えて背中を向ける。
だから私も、絶望感に包まれながらもくるっと元の方向を向いて歩き出したけれど……。

融資管理課のみなさんの視線で、背中に穴が開くかと思った。

そして隣からの視線はもう……。
言い表しようがなかった事は言うまでもない。