言い方は厳しかったけれど、でも、私のために必死になってくれてるのは分かったからそれが嬉しかったし、どうにかしてその気持ちに応えたかった。
実の母親にも見限られてしまった私を、他人なのに諦めずに毎日怒鳴ってくれる広兼さんの態度は、温かかったから。
泣いたのは、自分へのふがいなさからだ。

まぁでも正直に白状すれば、この人私を泣かすのが趣味なんじゃないだろうかって思った事も何度かあったけれど。
広兼さんの毎日の鬼のような指導のおかげで、ここでの仕事をきちんと覚えられた事には今でも感謝してやまない。

ただ、三ヶ月前に別れた彼氏がえっちなゲームにハマったって愚痴を散々聞かされた時にはその感謝も揺らいだりしたけれど。

「え?」
「だから、融資管理部に入ったカッコいい新人」
「ああ……多分、知ってます」

カッコいい新人をすぐに由宇の事だと脳内変換した自分の頭はどうかとも思う。
とはいえ、でも今までの由宇の人気ぶりを見ていればそうもなる。
中高って同じ学校だったから、新入生として入学してから由宇の事がどんな風に周りに広がっていくのかはもう分かりきっていた。

カッコいい人がいるって噂から始まり、積極的な一部の女子によるアピール合戦開始、女子を振り切って私に構う由宇のせいで強制参戦が決定。
その後、由宇目当てで私に近づく大人しい系女子に利用されて傷つくっていうのが中高と繰り返されてきたパターンだ。