そして、お父さんの強引な提案はとんとん拍子に進んで、その一週間後、星崎さんと由宇はうちに住むようになった。
それからもう七年が経ったのかと指折り数えて驚く。

由宇がきてから、静かだった家の中は一気に騒がしくなったし、時間が進むのも速くなった。

――認めるのは悔しいけど。
由宇がいてくれるから、毎日が楽しいし、由宇の何気ない言葉や態度に救われてるのも事実だ。


「姫川、融資管理部にカッコいい新人が入ったって知ってる?」

午前の業務を終えて一息ついていた昼休み、食堂でお弁当を食べていた私の隣に、広兼さんが座る。
広兼さんは私より四年上の先輩で、私が新人として預金管理課に配属されたのと時期を同じに異動として同じ部署に来た。

かなり仕事ができて処理するのも速い人だから、由宇によくのろまだとかトロいだとか言われる私なんて、イライラされて嫌われないかって不安だったけれどそんな心配はすぐに払拭された。

広兼さんはかなりのスポ魂を持った人で、要領の悪い私に分かるまで根気強く仕事を教え込んでくれた。
イライラを全面的に表して時々キレながらも、見捨てたりせずに。

気が長くはない広兼さんがキレて、何度言えば分かるわけ?!みたいに怒鳴られる事もあったから、その度更衣室で泣いたりもしたし、広兼さんに怒鳴られてる姿を心配して課長が違う人をコーチャーにしようかって声をかけてくれた事もあったけれど。
私は広兼さんとの関係が嫌いじゃなかったから、その申し出は断った。