箱の中身を、ひとつずつ取り出してみる。
中学の頃のスカーフや、高校の時のリボン。そして、修学旅行で買って交換したお守り。
高校の時、寄り道してお揃いで買ったシャーペン。ふたりで夢中になったゲームのソフト。一緒に見た映画の半券。
ゲームセンターでとったぬいぐるみ。大学受験を控えた由宇にあげた、パワーストーンのストラップ。
卒業旅行で行ったテーマパークで買ったキーホルダー。
たくさんのふたりの思い出がそこにあって……胸がきゅううっと鳴く。
嬉しさと切なさ、そしてなにより、由宇への想いが苦しかった。
「ただの交換こが好きな女々しい男じゃなかったんだね」
わざとそんな事を言った私に、由宇は「ふざけんな」と笑って……それから目を伏せる。
「こんなもん、気休めにしかなんなかったけどな。
それでも、こんなもんにすがりついてなきゃ、不安に呑み込まれそうだったから。
俺がおまえの部屋ばっかに居座ってたのは、この部屋にいると嫌でも思い出すからって理由もあるんだ。
あの時、ショックで何も言えなくなった時のおまえの顔を」
「でも由宇、あの時風邪引いてたじゃない」
「それでも覚えてるから。
夜中目が覚めると、ドアを開けて悲しみいっぱいに広げた顔で俺を見る梓織がいるんだ。
幽霊より性質が悪い」



