まぁでもこれはこれで由宇らしいのかと思いながらキョロキョロとしていると、由宇はラックに近づいて置いてある箱を手にした。
私の背丈と同じくらいの高さのラックは金属製で、そこにはフタのない箱が三つ並んでる。
その箱を、由宇が全部床に置くから、その傍に座って箱の中を覗いて……驚いた。

中に入っているモノは細かいモノばかりだけど、そのすべてに見覚えがあったから。

私の隣に座った由宇が「懐かしいだろ」と言う。

「全部……とってあったの? ずっと?」
「ずっと。もしもまた梓織が俺を忘れた時、これが少しでも俺を思い出すきっかけになるかもしれないって思ったから」
「そんな事考えてるなんて、全然知らなかった……」
「言わなかったし当たり前だろ」
「私はずっと……由宇の事、お揃いとか交換こが好きなんだと思ってた。ちょっと可愛いなって」
「別に好きじゃねーよ」

「でも嫌いじゃないでしょ」と言うと、由宇は「さぁな」とはぐらかして笑う。
絶対に嫌いではないと思うけど……。
卒業式の度に押し付けられた大量のボタンに由宇が込めた想いを思うと、それ以上言及する気にはならなかった。

Yシャツのボタンまで渡してきた由宇は、少しでもたくさん自分のモノを私に持たせたかったんだと思ったから。
私が記憶を失った時、由宇を思いだすきっかけを、由宇はこれでもかってほど私の部屋にも由宇の部屋にも、もしかしたら家中に用意していたのかもしれない。