「だから、最近しつこかったの? 春だから、発情期なんだと思ってた」
「狼に例えるなっつってんだろ」

私の憎まれ口に苦笑いを浮かべながらキスする由宇の胸を押す。
そして、なんだよと不満そうな色を浮かべた瞳を見つめながら言った。

「さっきの、どうしてもひとつ訂正しておきたいんだけど」

唇が触れるか触れないかの距離だから視点が定まらないけど、由宇がこちらを見てる事は分かったからまぁそれでいいかと続ける。

「明後日から同じ立場とか言ってたけど。
社内では私の方が先輩なんだからね。しかも四年も」

ふぅん、と興味なさそうに呟いた由宇の唇が、私のそれを塞ぐ。
もう何度目か分からないキスをされながら、さっきの由宇の軽い返事にムっとしていたけれど。

私の身体なんて知り尽くしている由宇の指先や唇に熱を上げられて。
不貞腐れた気分はすぐに追い出されてしまった。