「いや、どう考えても実力だろ。俺、すげー優秀だから」
「その通りだとしても自分で言った時点で自慢の優秀さも半分くらいの意味合いになっちゃうんだからね」
「ああ、俺の能力を半分にすれば梓織も俺に並べるかもな」

どこまでも憎たらしい由宇を問題集でバシバシ叩くけれど、由宇はそんなの気にするわけでもなく笑う。
だけど、20回くらい叩いていたところで手首を掴まれて、仕返しには多すぎる攻撃に強制終了がかかる。

「まぁでも、俺の半分しか脳みそがなかったとしても、おまえは十分すぎるくらい努力してるし何の問題もねーだろ。
明後日からは俺も同じ立場に立てるし、おまえが何か分からない事があっても俺がフォローしてやる」

いきすぎた仕返しを怒ったのかとばかり思っていたのに。
由宇が急にそんな事を言い出すから、どんな顔をすればいいのか分からなくなる。

10言えばそのうちの9は憎まれ口だけど、1だけ優しさが混じる由宇の言葉は、未だに慣れなくて。
優しい言葉をもらうたびに戸惑って焦って、胸が騒ぎ出す。

そんな私を楽しむように笑みを浮かべて見ていた由宇が掴んでいた手首をぐっと引っ張って、びっくりして声を出しそうになったところで口を塞がれる。
そのまま、私が由宇に覆いかぶさる状態でするキスに身体を引こうとしたけれど、背中と後頭部に回った手にがっしりと押さえ込まれて身動きひとつ取れなかった。