言葉を失いそうなほど驚いている広兼さんに首を傾げると、すぐに「当たり前じゃない!」と返された。

「あんな顔してるんだよ?
学生時代なんて遊び放題でしょ?! 女なんか日替わりでとっかえひっかえしてたんじゃないの?!」
「でも由宇、女の子苦手っていうかあまり好きじゃないみたいで、学生の頃から自分に近づいてきた子にすごく冷たく接してたから。
社内の人は仕事上繋がりがあるからさすがにそういう態度もとらないだろうけど、少なくとも先月まではそうでした」

由宇の大学の卒業式、私も興味本位で覗きに行ったのはまだ記憶に新しい。
由宇は、ここぞとばかりに写真をお願いされたりプレゼントを渡されたりしていたけれど、やっぱり冷たくあしらっていた。

中学の卒業式も高校の卒業式も、由宇のボタン欲しさに何人も女子がお願いに来ていたけれど誰にもあげてなくて。
まぁ、もう着ないとはいえ、服のボタンちぎるのが嫌だったのかなと解釈していたら、由宇はその日の夜、私の部屋にきて手を出すように言った。
片手を出したら両手だっていうから、そろえて出した両手。

そこにバラバラと落とされたのは、第二ボタンどころか、制服についていたボタン全部だった。
Yシャツのボタンまであって驚いた私に、由宇はやった代わりにおまえのもらうからなと偉そうに言って。

中学の頃は、セーラーだったからそのスカーフを、そして高校の時はリボンを、私の制服から強引にとっていった。