「だって……高校も就職も、自分で希望が言えないなんておかしいよ。
でも私は、今までそれをおかしいとか疑問に思った事なんて一度もなかった。
さっきお父さんと話してからずっと、それってなんでだろうって考えてたけど答えも出ないし」

誤魔化してもはぐらかしても私が話題を戻すからか、由宇は面倒くさそうに軽くため息をついて答える。

「でも、それで失敗したわけでもないんだし、今更どうでもいいだろ。
無理して変わる必要もない。
大体、これから大事な決断下さなきゃなんねー時がきたって、俺もおじさんもいるんだからおまえが決められなくてもなんの問題もない」

由宇が私に優しい言葉をかけて甘やかすなんて珍しい。
由宇は基本的な部分は優しいけれど、それを素直に言葉にはしない事が多い。
いつも憎まれ口だとか文句を言いながら、行動は優しくて気を使ってくれるっていうパターンがほとんどだ。

それに、以前、お父さんに私を甘やかしすぎだってお説教したってくらいなのに、なんで今私を甘やかすんだろうと疑問に思う。

優柔不断を嫌う由宇が、私のその部分を怒るどころかそのままでいいと言って、その上私が決められなかったら自分が助けるとまで言うなんて。
どう考えたっておかしい。

「もしかして……私死ぬの?」

聞くと、由宇は頭の上に乗ったままのタオルを取りながら「は?」と顔をしかめた。