ベッドに座る由宇の頭は、私が膝立ちになってようやく見下ろせる高さだった。
こういう時、由宇も成長したなぁなんてしみじみ思ってしまう。

小学校の頃は身長だって体格だって力だってあまり変わらなかったのに。
体格で競うつもりはなくても、あまりの差に少し悔しくなる。

「こんなびしょびしょのままでいて風邪引いたらどうするの? 会社は大学と違ってそんなに休めないんだから気を付けないと」
「俺はおまえみたいにすぐ風邪引かねーし。先輩風吹かせんな」
「だって先輩だもん。四年も。由宇はもっと私に敬意を払うべきなんだから」
「俺とおまえの間で今更敬意もなにもないだろ。大体、そんなもん払ったら変な壁ができそーで嫌だし」
「変な壁?」
「会社の中でおまえに敬語使ってたら、少なくとも社内のやつらは俺と梓織の関係を知らないって事になるだろ。
つまり、社内のやつらは俺たちを他人だって認識する事になる。
そーいうの嫌だろ」

「別に周りにどう思われたって私と由宇の関係が変わるわけじゃないんだしいいじゃない」と言うと、由宇は「だから」と少し強い口調で言う。
由宇の後ろに膝立ちして髪を拭いているから顔は見えないけど、少しイライラしてるみたいだった。