「もしかして照れてる、とか……」


そうだったらいいな、という願望半分、きっと「違う」って一言で返されるに違いない、という諦観半分で指摘をすると。


「……葵」


和泉くんがしかめ面で短くわたしの名を口にした。


「うん?」

「うるさいよ」


眼光鋭くこちらを一瞥。


冷たくわたしをあしらって、どんどん早足で先に行ってしまう。


おわあ待って待って待って、和泉くん足長いから歩くの速いのに。


ずんずん先に行ってしまったけど、一番手前の交差点で物憂げに待ってくれている和泉くん。


ちゃんとすぐそこで待ってくれてるし、さっきの「うるさいよ」って言い方も優しかったし、一連の行動は多分照れ隠しだ。


伏せがちな目をした和泉くんの立ち姿にどきどきする。


綺麗なシルエットに早く追いつこうと、ばたばたと駆け寄ると、「やっと来たの遅いね」と鬼のような発言が降ってきた。


でも、その耳は先ほどから変わらず赤いままだから、いいことにする。