*第三夜 3*


目、と言っていた。


宿に面した大通りを歩きながら、アスラはキアンのことを思い返していた。


――私にはどこまでも見通して君を見つけだす、自慢の目があるんだ。


どういう意味だろうか。

千里眼を持っているとでも言うのだろうか。


あの王子が? ――それとも。


(あの付き人。……リッカと言ったか)


幼い見目のわりに、大人びたを通りこして老成したような雰囲気のある少女。


(あの娘が、例えば魔人だったり)


ありえなくは、ないだろう。


すこし前なら頭がおかしくなったかと思うような発想だが、今はそういうわけにもいかない。


なにしろアスラ自身が、魔人を従えているのだから。



「イフリート」


アスラが振り返って呼ぶと、いつものように斜め後ろを歩くイフリートが、伏せていた目を上げた。