スルターナの部屋の窓からは明かりが漏れている。
アスラは外からスルターナがいることを確認すると、自室から持ってきていた水晶の置物を躊躇なく窓に投げつけた。
けたたましい音を立てて窓ガラスが割れる。
次いで、スルターナや侍女たちの悲鳴が響いた。
アスラは馬の背を蹴って窓から部屋へ飛び込んだ。
スルターナが衛兵を呼ぶのにもかまわず、走りながら腰に差したジャンビーヤを抜く。
そして実に鮮やかな身のこなしでスルターナに掴みかかると、壁に叩きつけて喉元に刃を突きつけた。
部屋の中が一瞬にして静まり返る。
外から衛兵たちの怒鳴る声が聞こえて、なぜ入ってこないのか不思議に思って扉の方を見ると、
いつのまに人型に戻っていたイフリートが内側から鍵をかけていた。