そうだ!先輩に質問されてたんだ!


自分の名前を知っていてくれたことが衝撃的すぎて、先輩に聞かれていたことを忘れていた。


「えっ、えと、ジュースを買いに、来たんですっ!睡眠のお邪魔をしてすみませんっ!!!」


もう、この際先輩に名前を知られていたことなんてどうでも良かった。
ただ、自分の高鳴る心臓をなんとか抑えようと、この場から立ち去る以外の方法を考えつくことができなかった。


「それじゃあっ!すみませんでしたっ!」


先輩の顔は見ずに、いそいそと立ち去ろうとすると、手首を誰かに掴まれ、身動きが取れない体制になってしまう。


「……ちょっと待ってよ、逃げることないんじゃない?」


少し暗めのトーンで話す先輩は、いつもの明るく高い声とは正反対で、私の進む足をいとも簡単に止めてしまう。