「ちょっと後ろに乗って。やるの見ててください」

 はっ……これが噂のタンデムですね……。タンデムバージンを先生に奪われるとは。
 先生の後ろに乗るのも慣れなくて、ヨッホッなどとかけ声をかけてしまった。

「しっかり掴まっててください」

 ブィンと走り出す。なにこれ怖い……ふたり乗り、こんな感じなんだ……。

「ここでスピード作って、左折……すぐ右折、そして左折……出る」

 グイングインとバイクが傾けられ、頭が後ろに横にグラグラする。やだなにこれ、これで覚えろって言うのか……え!

「ハンドルだけではバイク曲がらないから、目線と体の傾けね。倒れそうになったら加速する」

「はい……」

 クランク少し手前で降ろされ、先生もバイクから降りる。スタンドを立て、エンジンを切る。
 ああ……まだ乗るところからやるのか。ここがまず苦手なんだけど。ハンドルを握ると、どしっと重さが手を伝う。

「1周走って左折合図、1速で進入して次の角へ視線、すぐ出口に視線という感じで」

 先生は、ではやってみてくださいという言葉を残し、バイクに乗ってクランク出口へ回ってしまった。あたしはそろそろと発進、外周1周してから左折合図でクランクに入った。進入の時に思った。無理! って。

「うわぁ」

 ガシャーン! 転倒だ、バイクを倒してしまった!

 スピードもゆっくりだし、うまく避けたから、体は無事。バランス崩したよ……なんだよクランクって……恐ろしい。

 バランスを崩して傾いたバイクのなんと重いこと。あらためて「バイクって重い」と思った。

 しみじみ思ってる場合じゃない。バイク起こさなくては。引き起こし!

「ふんっ!! ……くおおおお」

「全力で、はいがんばって」

 先生が応援してくれてるから、がんばって起こさなくちゃ。起きろ、起きろおおおお! バイクううぅ!

「せーの、ハイイィ!」

 かけ声だけ大きい。体勢を整えて深呼吸して再度トライしても、バイクが起きあがらない。重いよ本当に!