いま免許取りに行ってるし、先日カフェにも行ったよ。そう言いたかったけど、ミナセつなぎスタッフさんは急いで店を出て行ってしまった。言いそびれた……そうだよね、ゆっくりしてる場合じゃないよね。

 あたしはその隙にカウンターの上を拭き、置いて行かれたレシートを整理した。今日の終わりにこれを捨てる。
 入れ替わりで、2人のお客さんが入って来た。注文は、また日替わり弁当。今日は日替わり弁当の独走だなぁ。

「日替わり出るね。真白ちゃんのそのボードの影響だと思うよ」
 奥さんがそう言って笑う。

 2人のお客さんにお弁当を渡すと、また客足が途絶える。揚げ物の匂いと、フライパンで炒める音。外に目をやると、天気が良くて、ここの商店街は穏やかだ。休日じゃないからな。
 サクラクックがある商店街は、車道のあっちとこっちに店が並ぶ。スーパーや酒屋、コンビニ、焼き鳥屋や焼肉屋、魚屋など。居酒屋やスナックもある。

 商店街、人の息づかいを感じる。あたしはこの街でひとり暮らしをして、サクラクックで働き、そして光太郎さんと出逢って、バイクの免許を取ろうとしている。なんか、面白いな。出逢いも偶然も、生活も、気持ちの変化も、全部自分のものだもの。

 あたしはぐっと背伸びをし、筋肉痛の腕をさすって、味噌汁が並ぶ棚を整頓した。

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