距離感を測り兼ねていれば、視線を感じた。見れば関城先輩が遠慮なんか微塵もする気がない風に、じっと私へ視線を注いでいた。


「……なんですか?」

「べつに。話だけ聞いてたから、どんな奴だよ、こんな感じかと思っただけ」


ふっと逸らされた視線の意味は、想像と違ったってことだろうか。想像通りと思われてもなんだか嫌だけれど、バイト先にいない人間の話なんか聞かされても面白くはないだろうに。

ちょっと申し訳ないな。断ってばかりいないで、一度くらい飲み会に顔を出しておけばよかった。そうすればこんな沈黙、耐えられたかもしれない。


「アンタさ……」

「はっ!?」


そろそろ限界が近いという頃に、声を頼りに翠の姿を見つける。ほっとしたのも束の間、両手に大きなビニール袋を持った翠がその重さを感じさせないくらい速く駆け寄ってきた。


「ちょっと! 何してんの! なんで灯の横に座ってんですか!」

「空いてたからだろ」

「そういう意味じゃない!」


勢いよく、私と関城先輩のわずかな隙間にビニール袋が置かれる。間近で見るとすごい量の食材だ。


「灯に近付かないでって言いましたよね!?」

「だったら電話出ろよ。俺が用あるときに居ないお前が悪い」

「ああ言えばこう言わない! なんなの! 減らず口か!」


私を叱るとき以上に怒っている翠の様子を見ながら、親密なんだなあ、なんて思っていると、ぐりんっと翠が振り返った。


「灯! あたしはこのバイト先の後輩を指導しなくちゃいけないから、ごめんだけど先帰ってて!」

「え? うん、……え? これ、私に?」

「そうだよ! もっとちゃんと食べなきゃダメ! 灯、昼もろくに食べなかったでしょ。知ってるんだからねっ」


言いながら押し付けられた、すごい量の食材。