間が、もたない。
気にしなければいいのに、沈黙が気まずくて仕方がない。必要以上に関わらないようにしたいのに、そうしようとすればするほど意識して相手を見てしまう。

どうすれば浅くさっぱりとした関係でいられるか。自分のことも相手のことも深く知らずに済むように言葉を交わすことは、思いのほか難しい。


電話したふりでもして、出ませんね、呼んできます、で乗り切ろう。そう携帯を取り出した矢先だった。


「アカリだっけ?」


ふいに隣から、はっきりとした声音と、射貫くような視線が飛んでくる。私は「はい」としか答えられなかった。


「はじめましてだよな。関城(せきじょう)。2年。よろしく」


愛想笑いも付けず端的に告げた関城先輩に自己紹介を返しながら、対照的だなと感じる。何が、とも。誰と、とも。鈍痛のする頭で深く比べたりはしなかったけれど、そう感じた。


「関城先輩は前にも翠を待っていた方ですよね」

「敬語いらねえ。つーか知らねえんだな。俺がアンタの後釜だって」


え、と顔を上げる。関城先輩は覚えさせるように私側へ首を傾け、目を合わせた。


美青年とまでは思わないけれど、ずいぶん整った顔をしている。その割に、好き嫌いが分かれそうな性格をしていそうだ。優しそうではなく、かと言って冷酷非道そうなわけでもなく。

感じるのは、確固たる自信を持っているような、簡単には折れそうにない強さを持っている、そんなヒューマニティーだった。


「えっと、すみません。私、知らなくて……飲み会に誘ってくれてました、よね」

「俺が誘ってんじゃねえけど、周りがうるせえからいい加減来やがれとは思ってる」

「すみません……」

おかしいな。初対面のはずだけど、なんでこの人は上から目線で、私は平謝りしているんだろう。バイト先で言ったら私のほうが先輩なのに。もう辞めちゃったし、そんな権限は今さら何の効力もないんだけどさ。