――暑い。真夏の押し入れに隠れているのだから、暑いに決まっているけれど。これは、未来の夢じゃないのに。


息を潜めていた私の目は、いっくんへ向いていた。半分だけ開いた襖の向こうから差し込む日差しが、眩しい。


『できないでしょ? 舌っ足らずの頃はあんなに可愛がってたのに。今じゃ目を合わせるのも嫌そうだもんね。分かるよ。ハルの瞳は、見つめられると吸い込まれそうな気になる。夢を見る準備をしてるって感じる。貴方たちはそれが恐ろしくて、自分のどんな未来を見られるか気が気じゃなくて、ハルを遠ざけたいんでしょう』


また汗が流れ落ちた。

いっくんは私がいないかのように話す。私が曖昧にして気付かないふりをしている現実を、私のいる場ではっきりと形にして、口にする。


そっと片方の目元に触れた私の胸は、確かに傷付いていた。

いっくんを嫌いだと思ったことはない。だけど怖いと感じることは幾度もあった。誰よりも優しくて、誰よりも明確に私を傷付ける。少しも悪びれることなく、さも当然のように。


特別だと、奇妙な力ごと愛してくれた人は、こんな力があるから疎まれるのだと教えてくれた人でもあった。


他の人とは違う、歪な愛情。私にとっては、とても純粋な独占欲。

うんと甘やかされて、うんと傷付けられて。それはまるで、中毒のように。


『いらないなら、僕がもらっても問題ないよね』


何も言えなくなった使用人が出ていってしばらくすると、いっくんは顔を覗かせた。色も温度も取り戻した目を細めて、笑みを浮かべている。