「緊張……」

「するよ! そんなまっすぐ、じっと見つめられたら!」


そう言うあなたも私をずっと見ていなかったっけ。今と変わらず、まっすぐに。


ぱっと逸らした目が泳いだのは、彼が訴えた言葉の意味をようやく呑み込んだからだった。緊張、とは違う。


「すみません」

「や、嫌だったわけじゃないから、謝らなくていいんだけど。俺、変な顔してなかった?」

「してません。すみません」

「謝らなくていいってば」


ははっと笑いをこぼされて、なんだかそれは私が変な子って笑われたみたいで、実際は見知らぬ人と向き合うしんどさがなくなっていることに、反抗したくなった。

普段の私なら人の顔をまっすぐ、じっと見つめるなんてありえない。


「あなた、本当にストーカー?」

「えっ!?」

「……その反応からして疑わしいんだけど」

「いやだって、なんで急にそんなっ」


この人、不意をつかれるの得意じゃないんだろうな。

苦手科目の宿題を大量に出された小学生みたいに目を回している。それがひと瞬きの内に輝きを取り戻して、私へ向けられていた。


「正真正銘、きみのストーカーです!」

「そんな嬉しそうに笑って言うセリフじゃないと思う」

「だって、質問してくれたから」


目を細めた代わりに大きく口を開けて、ああこれが笑顔っていうものなんだろうなって知っているのに改めて思ってしまうくらい、彼は無邪気に笑った。


「……あなたは、なんでここにいるの」

聞くと彼はゴミ捨て場とは反対方向の、立派な常緑樹のある曲がり角へ視線をやった。

「あの人が来ないか見張ってた」

司さんのことだと気付いたものの、意味が分からない。