……期待。私の喜ぶ姿が見たかったってこと? よかれと思ってしたことが裏目に出て、いたたまれない気持ちなんだろうって思ったのに。


「うわあ、俺ってば、やればできる子」


両手で顔を覆ってそんなことを言うから、どんな表情をしているんだろうって、ぼんやり考えた。変な人。何度も感じたことを、今夜はなおさら強く思った。


「あ、傷、足っ、大丈夫!?」


ふいに腰をあげた私につられてか、ストーカーは貸すにも貸せないように手をばたつかせながら立ち上がる。触れ合うことなく、私たちは無言で向かい合った。


この人の夢を、見たことがあっただろうか。

記憶していないということは、今まで関わったことはないはず。でも忘れている可能性が全くないとは言い切れない。


私には19年間の記憶と未来の記憶があるけれど、夢で見た未来は目が覚めたあとも100%覚えているわけじゃない。


夢自体がうろ覚えになってしまうときもあれば、はっきりと日付や場所を覚えている夢もある。それらが分からなくても、服装や景色でおおよその季節や時刻は予測できる。どこかで見た光景だと感じたら、夢で見ていたことを鮮明に思い出すときだってあるのだ。

「あの、」

思い出そうとするが出てこない。


存外、綺麗な瞳をしているんだな。もっと淀んでいるのかと思った。似たような色の髪も柔らかそう。目にかかって邪魔そうなのも、かえって印象に残る。


やっぱりこの人とのはじめましては、ゴミ捨て場の前だったとしか思えない。


「あの! そんなに見つめられると緊張するっ!」


服が昨夜と同じものだと気づいたとき、目の前から大砲のような声が飛んできて驚いた。