モッズコートに細身のパンツ。グレーのカーデの中に差したシャツは、くすんだブルーとピンクが目立つタータンチェック柄だった気がする。


いや、絶対そう。見間違いでも、思い違いでもない自信がある。


一歩前に出てきた男の子は先程よりも街路灯の明かりを受け、まっすぐと私を見つめてきた。やはり彼だと思っただけで、不思議と怖さはなかった。


深夜の軟風に揺れる彼の薄茶の髪は何故だか透き通っているように見え、朝と変わらず、印象的だった。


「ゴミ捨て場の……」


彼は私の肩越しに見えるであろうゴミ捨て場に目をやり、気まずそうに掻いた頬をゆるめた。そうして再び私と視線を交えると、

「うん、そう。こんばんは」

首を傾け、晴れやかな笑みを浮かべた。
まるで以前から親しい仲であるかのように柔らかなそれは、ようやく私に安心とは逆のものを与える。


確かに朝、ゴミ捨て場のそばに座っていた人だけれど。その人がどうして深夜に、木登りして、雪玉を投げてくるわけ?


バッグの紐を握る手の平がじわりと汗ばむ。


きっともう、この出逢いを無かったことにはできない。僅かでも言葉を交わし、互いに何かしらの感情を向けている。

これからどんな展開を迎えようとも私と彼には間違いなく、遅かれ早かれ結末を迎えるだけの、名もない関係が生まれたのだ。



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