夢見るきみへ、愛を込めて。


なんだろうな。改めて知りたいことはと聞かれると、私は彼のどんな部分を知りたいんだろう。

「じゃあ、とりあえず、コーヒー淹れ直してくる」


冷めきったマグカップをふたつ持ち、キッチンへ向かう。インスタントコーヒーの粉末を目分量で入れ、電子ポットからお湯を注ぎリビングにいる彼を盗み見る。ソファーを背に真っ暗なテレビと向かい合っていた彼は、壁時計や暖房機のあたりを見たりと落ち着きない。


私はほとんど音楽もテレビ番組も流さないから、家の中は静かなものだ。退屈だろうなとリビングへ足を進めると、彼はもぞもぞとようやくコートを脱いでいた。


「寒いんじゃないの?」

「あ、うん。だいぶあったまったから平気。ありがとう」


湯気の立つマグカップをテーブルに置き、テレビを背に彼と向かい合うように座った。
意外と細身だ。いつも外で、完全防寒姿の彼しか見たことがなかったから当たり前だけど、ライトグレーのケーブルニットから見て取れる、ゆるやかな身体のラインが目新しくて、なんだかどぎまぎする。


「そういえば、残念だったね」

「何が?」聞き返した私に、マグカップを持った彼は空いた手でベランダを指差した。

「雪。好きなのに」


外れた天気予報を思い出し、降らなかった雪を想像する。

私、雪が好きだなんて話をしたっけ?


「きみは雪が降らないと、残念そうに空を見上げる」

「……」


私が話したわけじゃなく、彼が自分で考えて好きだと判断したらしい。この人はいつから私を見ていたんだろう。


同じ大学だとしても私はまだ一回生で、視線を感じ始めたのは11月頃からだ。全部が全部、彼ではないだろうけど。大学で話しかければいいものを、12月に入った途端あんな妙な形で急接近してきたのは、どうしてなの。