夢見るきみへ、愛を込めて。


「大学は行ってるの? こんな朝方に寝る生活してたら、起きられないんじゃない?」

自分のことは棚に上げて尋ねてみる。少し緊張した。

「行ってるよ。最近は気が向けば、だけどね」

淀みない答えに段々と心拍数が上がっていった。悟られないように振る舞っているつもりでも、彼は私が聞こうとしていることを察しているように感じた。目元も口元も緩めてはいるものの、質問攻めしているのに、にこにこと嬉しそうにしていない。だったら、遠回しはやめる。


「私と同じ大学なんじゃない?」

「当たり」


そうしてやっと笑顔を見せた彼に、拍子抜けする。張り合っているつもりはないけど、あっさり認められては整理が追いつかない。


「嬉しいなあ。いつからそう思ってたの?」

ぎくりとした。散らばる思考の中で、それらしい理由を探す。

「いつ、って言われても……他に接点がないし。バイト先で顔を合わせてたら、覚えてるから。大学かなって」

それに、大学構内でも視線を感じた。あれは司さんでも、雇われた人でもなかったんだ。

「どうして……、」

「うん?」

大学で話しかけてこないのか、聞こうとするのはやめた。


気が向かなければ大学へ行かない彼にも日常があって、夜にしか来ない事情もあるんだろう。目の前に座っているのは同じ大学の人で、自称ストーカーと名乗るくらいには、話しかけずに私を見ていた。あとは関城先輩と知り合いか、聞くだけでいい。


――本当に? 自分への問いが頭の中で反響する。不思議に思っていることが他にもあるのに、尋ねない理由があるだろうか。


私には、あった。人と関わることを最小限に押さえてきた私には。


「何? どうした? 具合悪い?」


心配そうな顔つきで、わずかに身を乗り出した彼に首を振った。


いつの間に、こんな近くへ寄ることを許していたんだろう。目を合わせて、言葉を交わして、公園ではベンチに並んで座って、家にまであげて。
気付かない速度で変わっているなんて嘘。気付いていた。認めたくないと抵抗しながら、認める理由を探していた。