ばちっと弾けるように目が覚めた。部屋に差す光が時明かりであることを理解し、体を起こす。そばに置いていた携帯からは、アラームも通知も鳴った様子はない。

念の為、ローテーブルに置いていた写真を手に取る。司さんが送ってくれた、いっくんの妹が映る写真を眺めるも、やはり姿形がまるきり違う。


「……翠」


知りたい未来だけ見られたら楽だけど、そう上手くいくはずもなく。私が見たのは、翠の未来だった。


写真を元の場所へ戻し、ぐしゃりと髪を掻き上げる。

昔から翠の未来はいやに鮮明だ。ここ3年のあいだでは、もっともはっきり見聞きできると言っていいほどに。そのせいか思考が現在と並行しているような感覚が強くて、もともと起きていたかのように寝惚けることがない。高確率でほぼ全てを覚えている。

今回も同じだった。翠が危ない目に遭ったり悲んだりしないのであれば、それでいい。関城先輩と言い争う未来を見ただけなら、私がすることは何もない。だけど、私が、原因?

額に手を当てるも、何かが重く伸し掛かっているのは頭ではなく肺のあたりだった。自分の話をする誰かの夢を見るのは久々で。こういうのを、気が重いっていうのかもしれない。


翠……怒っていたけど苦しそうだった。関城先輩は少し苛立っていたように思う。

私がいろいろ大変な時期、って。一人暮らしになったことだろうか。それとも家族の命日だったから、とか……。それなら“いつ”だろう。髪型も冬休み前となんら変わりなかったし、服装からしても、そう遠くない未来のはず。数日から長くても1か月くらい先だろうか。

関城先輩が確認したいことって何。アイツって誰。翠が言う私の地雷なんて思い当たらない。

考えても仕方ないのに、ふたりの会話がパズルのピースとなって、隣り合う小片を探している。そうしてどんどん、気分が落ち込んでいく。

久しぶりにぐっすり眠れたのに、台無しだ。

どうして私はこんな力を持って生まれてきてしまったんだろう。問いかけるように窓の外を見ても答えが返ってくるはずもない。


「――……、」


仄明るい東の空に、呼び損ねる。

一日の始まり。無性に話したくなったのは、名前も知らない彼だった。