「……ぼくは」
言いかけたニコだが、何かに気づいて口を閉じた。
リビアは怪訝そうに首を傾げる。
「ニコ、どうし……」
聞こうとしたとき、リビアの耳が何かの音を捉える。
ニコの視線を追って振り返った先には、部品加工区画へと続く南の大通りがあった。
誰かが2人、荷車を引いてこちらを目指して猛然と走ってくる。
「うおぉおおお!」
「このぉおおお!」
タンザとハックだった、また競争をしているようである。
減速する気配のない彼らを見て、リビアが慌てて身をひるがえした。
そこへタンザが、やや遅れてハックが突っ込み、ニコが座っている石材にぶつかった。
そのままへたりこんで突っ伏す。
両手をついていたのでよかったが、一歩間違えれば大ケガだ。
「っや、た、俺の、勝ち……っ」
「んのっ、くそ……」
タンザが息を切らしながらも握り拳をつくり、同じく切れ切れの息でハックが悪態をつく。
2人の呼吸が落ち着いたのを見てからニコは尋ねた。
「2人とも、また勝負ですか?」
「おう、どっちが先に中央塔に着くかってな。
俺もタンザも、頼まれたネジと歯車を届ける仕事を任されたからよ」
先に起き上がったハックが答える。
彼が親指を差した荷車にはいくつかの小箱が載せてあり、側面には種類を記してあった。
額に浮かんだ汗を拭いながら、タンザが得意げに言う。


