ちく、と左胸が疼いた。
そこを押さえて目を閉じた一瞬に、悲しげに口許に笑みを貼り付けるティファニーの姿が見える。
彼女は自分がどんなに辛くても悲しくても、それを決して表には出さない。
そうやって、逃げ出したくなる痛みに独りで耐えるのだ。
誰かのせいで、特に自分のせいでティファニーが苦しむのは絶対に嫌だ。
そんな姿は見たくない。
――ごんっ。
脳天に小さな衝撃が走った。
捕まえて顔をあげて見ると、それは口を閉じている熊のぬいぐるみだった。
丈夫な細紐でつながれた右手が、励ますようにニコの額を撫でる。
手版を操作しながらリビアがにっこり笑った。
「なんですか」
「そんな難しい顔しないの。
要するにね、あたしが言いたいのは、変に深く考える必要なんかないってことよ。
捨てられた理由がはっきりしていなくても、あんたは今ティファニーのゴーレムになってここで暮らしてる。
今が幸せなら、過去のことなんか考えないでいいじゃない」
紐が張り、ニコの手から熊がすり抜ける。
リビアは戻ってきたぬいぐるみを両手で抱えると、こちらを向いているニコに尋ねた。
「あんたは今、幸せだって感じてる?」


