遊んでいた棒を放して、リビアはニコの前に立った。
先ほどまでの楽しげな雰囲気から打って変わって、真剣な表情になっている。
思わずニコは背筋を伸ばして彼女に向き合った。
「ニコ」
「はい」
「もう過ぎたことなんだから、元造主についてあれこれ考えるのは止しなさい。
ティファニーに失礼よ」
「え……」
『それってさー、今のご主人に失礼だとは思わないのか?』
いつだったか、ラリマーに告げられた言葉を思い出した。
あのときはまだ完全にシャロアのゴーレムになることを諦めていなくて、それを見抜かれた。
そんな感情は微塵も抱いていないと、今なら胸を張って誰の目を見ても断言できる。
けれども、それを抜きにしても彼とのやり取りについて考えを巡らすのは、やはり無作法なことなのだろうか。
「……ああ、ごめん、失礼はちょっと言い過ぎた」
急に無言になったニコを見て不安になったのだろう、リビアが慌てて両手をひらつかせた。
「失礼とまでいかなくても、ティファニーが気にするのは確実よ。
それにあんまり考えすぎるのは、シャロアのことを引きずってるも同然になるからね。
あんたはそこら辺が鈍くて、逆にティファニーは敏感だから気を付けなさい。
うっかりティファニーを傷つけたり悲しませたりしたくないでしょ」


