濡れそぼった子犬のように鳴いていたウォルフィンだが、その声がまた唐突に止む。
爪を出し、口の端を持ち上げ、よだれでぎらつく牙を剥き出しにした。
はっとティファニーがそれに気づいたとき、すでにウォルフィンはとびかかる大勢になっていた。
極度の恐怖心を抱いた人間がとる行動は大きく分けて2つ。
支配されて失神してしまうくらい動けなくなるか、打ち勝とうと暴力的になるか。
ウォルフィンは後者だった。
獰猛で凶暴な性質をもつものほど、抱いた恐怖の反動は大きいのだ。
ここに居てはいけない。
ティファニーは逃げようと後ずさったが、すぐに幹にぶつかった。
よろめき、再び地面に倒れこむ。
「ガウォオオッ!!」
同時にウォルフィンが口を大きく開いて跳躍した。
ティファニーは目をきゅっとつむり、身を堅くして痛みに覚悟する。
――バァン!
その瞬間、背後で轟音が響いた。
ティファニーの悲鳴も、ウォルフィンの断末魔もたやすくかき消される。
鉛玉に脳天を撃ち抜かれ、青毛の獣は冷たい土の上に倒れた。
風穴の空いた額から、赤い血と少しの脳漿が流れ出、白っぽい表土を染めていく。
ティファニーは耳を押さえて固まっていたが、余韻がなくなってから恐る恐る顔をあげた。


