「グルルルル……」
ふいに草を踏む音が近づいてきて、唸り声が聞こえた。
ティファニーはぎくりとして振り向く。
種類も並び方も様々な木立から、ぬうっと一頭の大型獣が現れた。
藍色の体毛に鋭く光る牙。
いつだったかニコが捕まえてきたウォルフィンだった。
「あ……」
猫を連想する双眸と視線が合い、背筋が凍りつく。
ウォルフィンの目つきが鋭くなり、唸りがさらに低くなった。
だが、その唸りがぷつりと止まる。
すぐに襲いかかってくると身構えていたが、ウォルフィンは紫色の舌を出して短い耳を下げた。
唸り声が悲しげな鳴き声に変化する。
怖がっている様子だ。
本当に獣たちまで怖がらせてしまうのだと分かった。
(やっぱり、『無色の瞳』は生き物とは相容れないのね……)
セドナたちでさえ、この目を怖がっていた。
自分の存在を受け入れてくれる人はどこにもいない。
分かり切っていた事実を改めて突きつけられているような気分だった。
小さく非力な女に怯えている凶暴な肉食獣を見ていると、自分まで憐れに感じてきた。


