「よせ」
セイクリッドが慌てて叫び、狩人たちの前に立ちはだかった。
「彼女を撃ってはいけない、銃を降ろせ」
狩人たちはまだ銃を手にしていたが、まともに構えている者はいなかった。
どうにか構えてはいるがとても撃てる様子ではない者、なぜか床に押し付けている者、しがみついてガタガタ震えている者もいる。
ティファニーは本来の役割を果たしていない黒い筒を眺めて、急に深い眠りから目覚めるように我に返った。
自分は殺されそうになっている。
けれども自分を殺そうとしている者たちは、生まれて初めて『無色の瞳』を目にして混乱している。
セイクリッドは彼らを落ち着かせるので精一杯の様子だ。
逃げるなら今しかない。
瞳を露わにした瞬間に撃たれると覚悟していたが、状況は思わぬ方へ転がっていた。
ティファニーは棒のようになっていた足を動かして庭に跳びおりる。
「あ、待て」
背後で誰かが怒鳴り、また銃声が静かな森を裂く。
だが銃弾は見当はずれなほうへ跳んでいったようで、どこも痛くなかった。
森の木々の枝に留まっていた鳥たちがばさばさと逃げていく。
空気を打つ羽の音を聞きながら、ティファニーは懸命に走った。


