「なるほど、ライバルに作戦を聞かれないためですね」
「そういうこと!
先輩は工房長代わりだから、ここで寝泊まりしてるんだ。
うっかりメモとか置いていって、それを盗まれると困るし」
セドナは机の横からリュックを取った。
口を開き、そこに部品や工具を入れていく。
接客スペースから、ヒーラーの笑い声が聞こえた。
話はまだ続いているらしい。
「お待たせ。裏口から出ようぜ」
家に戻る旨のメモをヒーラーの作業テーブルに置き、セドナが少年を手招きする。
もう悔しさの表情はない。
目標を見つけた、楽しげな顔つきだ。
「セドナ、楽しそうですね」
「え?ああ、すっげえ楽しい!」
「手伝いと言っても、ぼくはほとんどしませんよ。
これは君の依頼ですからね」
「分かってるよ。
お前に何を手伝ってもらうとかは、行きながら考える。
あーっ、腹へったー!」
「宿に今日明日の宿泊を断りに行くから、ついでにサンドをもらって行きますか?」
「おっ、賛成」
セドナが裏口の戸を勢いよく開ける。
暗くなった空には星が瞬き、街はまた臙脂の光に包まれ始めていた。


